法人税法の「別段の定め」のないものについては、公正処理基準に該当するかどうかこれまで問題視されてきました。
その多くは「別段の定め」により個々に規定されていると考えられていますが、必ずしもそれがすべてではありません。
法人税法22条4項が創設された当時においては、税制の簡素化という趣旨に合致する規定であり、
合理的な考え方であったとしても、今日の国際財務報告基準等の強い影響を受けて次々と公表される
会計基準、中小企業会計指針、証券取引法から金融商品取引法への改変、会社法の創設など、
制度会計の枠組みは、それぞれの目的に合わせて大きく変容をしています。
しかし、法人税法はその変化に対応できず旧法体系のなかで、対応しようとしているように思われます。
その象徴的規定が、確定決算主義と並んで、この法第22条4項「公正処理基準」ではないでしょうか。
前述したように、「公正処理基準」は、明文化された特定の基準だけを指すものではなく、
必ずしも一つに限定されるものでもないのです。今後新たに公表される会計基準をも該当範囲とされます。
このような「公正処理基準」の本質的な性格からすると、その適用範囲は無限に広くなって行くと考えられます。
自立的な法人税法の確立のためには、「公正処理基準」の適用範囲を会計用語、用法等の定義など最小限にし、
課税公平の観点から、個別規定をその都度設けていくべきではないでしょうか。
また、現行の法人税法は確定決算基準を採用しており、
確定決算基準は、財務諸表を単一化するという便宜性、減価償却などの内部取引の処理の確認、
申告調整による課税所得の減額防止、課税の安定性および企業利益と課税所得を有機的に
結びつけることによる申告の真実性の確保にあります。
企業の健全性を阻害しないためには、企業会計と法人税の計算規定を可能な限り一致させることが課題であると考えられるでしょう。
【参考文献】
中央経済社 編 『新板 会計法規集 第7版』 中央経済社
神田秀樹 著 『法律学講座双書 会社法 第十六版』 弘文堂
桜井通晴 著 『管理会計 第五版』 同文館出版
長吉眞一 著 『監査基準論 第3版』 中央経済社
佐藤信彦 著 『財務諸表論の要点整理 第11版』 中央経済社
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