最近よく耳にする「働き方改革」とは一体どういったものなのでしょうか?
一言でいうと、「一億総活躍社会を実現するための改革」だそうです。
この一億総活躍社会とは、少子高齢化が進む中でも、
50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会のことを指しています。
「働き方改革」は、日本の政府の重要政策のひとつに位置づけられていて、
多様な働き方を可能にする社会を目指しているためのものです。
皆さまご存じの通り、日本の人口は2008年をピークに減少に転じています。
現在の日本が直面している「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や
「働くスタイルの多様化」などの課題・変化に企業は対応していく必要があり、
そのためには生産性向上や従業員満足度向上を実現する環境づくりが求められてきています。
端的に言えば、人口が減れば、労働力不足となります。
この労働力不足を解消させるため、働き手を増やし、
出生率を上昇させ、労働生産性を向上させる必要があります。
つまり、働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、
自分で“選択”できるようにする政策を「働き方改革」と呼びます。
実は、働き方改革実現進会議が提出した
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」は、
2018年6月29日に可決・成立し、2019年4月1日より一部が施行されました。
さて、「働き方改革」の原因としてあげられている生産年齢人口が
総人口を上回るペースで減少している点ですが、
実際、どのくらいのペースでそれぞれが減少しているのでしょうか。
現在の人口増加・減少率のままでは、2050年には総人口9,000万人前後、
2105年には4,500万人まで減少するといわれています。
また、働き手となる「労働力人口」はいかがでしょうか。
労働力人口は第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニアが労働力として
加わった時期をピークに減少の一途をたどっています。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した出生中位推計の結果によると
生産年齢人口が、2027年には7,000万人、2051年には5,000万人を割り、2060年には4,418万人となる見込みです。
ちなみに、実は日本の労働生産性は、OECD加盟国の中で35ヵ国の中で22位、主要7ヵ国の中では最下位です。
このままでは国全体の生産力低下だけではなく、国力の低下は避けられないため
内閣が本格的に「働き方改革」に乗り出したという背景があります。
この労働力不足解消のために下記3つの対策案が考えられています。
(1)働き手を増やす
(2)出生率を上げて将来の働き手を増やす
(3)労働生産性を上げる
これらを実現させるための最重要事項・課題としてはさらに2つあります。
(1)長時間労働改善
(2)正規社員と非正規社員の格差是正
それぞれについて説明いたします。
日本は国際的にみても長時間労働が深刻な問題とされており、
少し前に国連から是正勧告がされていました。
この長時間労働の問題は、「出生率」にも影響すると考えられています。
働き盛りの30代~40代は長時間労働を望まれますが、
ちょうど出産・育児などのライフイベントと年齢が重なるためです。
また、以前であれば、終身雇用が主流で、働けば働くほど待遇があがっており、
「睡眠時間が少なく、忙しいことが素晴らしい」といった価値観がありましたが、
正直、現在の日本には合わない志向ですね。
そのため、働き方改革では、下記のような取り組みを実施することになりました。
・法改正による時間外労働の上限規制の導入
・勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
・健康で働きやすい職場環境の整備
これまでは「特別条項」という条件を労使協定に加えることで
無制限に労働時間を延長することができました。
しかし、労働者の過労死などを防ぐため「働き方改革」により
残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内繁忙期であっても月100時間未満、
年720時間以内にするなどの上限が設けられ、これを超えると刑事罰の適用もあります。
※ただし、事業や業種によっては適用猶予(2024年4月まで)や除外となる
また大企業を対象につき50時間を超える時間外労働賃金の割増率を
50%とする労働基準法の規定がすでに適用されています。
※参考コラム
「有給休暇」の義務化?!パートやアルバイトだと取得できない?
日本の非正規社員として勤務する方々は労働者全体の約4割を占めています。
また非正規社員の待遇は、正社員の時給換算賃金の約6割にとどまります。
働き方改革ではこの「非正規社員の待遇改善」に向けて下記の取り組みを上げています。
・同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備
・非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進
主に政府としては、労働によって同じ付加価値をもたらす人には
同じ賃金を支払うべきという「同一労働同一賃金」を目玉として考えています。
将来的には非正規社員という枠組みをなくし、ライフステージにあわせた働き方を
選べるようにすることを目的とされています。
こちらは2020年4月から法改正が行われることが決まっており、
各企業は対応をより強く求められることになります。
またこの「同一労働同一賃金」に取り組む本当の理由として
「デフレの解消」のためともいわれています。
消費を促進しインフレに向かっていくためにも労働力の4割を占める
非正規社員層の待遇改善が必須となっているのです。
※参考コラム
「同一労働同一賃金」が転職市場に及ぼす影響
また、高齢者の就労促進も行われています。
今の日本では、高齢者の約6割が「65歳を超えても働きたい」と考えていることが国の調査でわかっています。
しかし、現状実際に仕事に従事している高齢者は2割程度にとどまります。
そのため、継続雇用延長や定年延長の支援、高齢者のマッチング支援など
「働きたい」と考えている高齢者に就労環境を整えていく必要があります。
65歳以降の継続雇用延長や、65歳までの定年延長を行う企業等に対する支援が検討されています。
※参考コラム
一生現役?!70歳定年制?!~人生100年時代、いつまで働けばよいのか~
この「働き方改革」は大企業だけではなく中小企業にとっても
重要な経営課題の一つとして世の中に認知されてきています。
少し長くなってしまいましたが、働く側も、雇用する側も
働き方改革を理解する何かのサポートになれば幸いです。
北海道出身。関西の大学へ進学後、新卒で入社。広島⇒神戸⇒札幌と様々な拠点にて勤務。現在は、北海道・東北エリアの薬剤師を中心に転職支援を行う。