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キャリアアドバイザーコラム

2022年度(令和4年)診療報酬・調剤報酬改定のポイント│リフィル処方箋・薬剤師業務の評価体系見直し・地域体制加算の区分変更

薬剤師の転職市場の買い手化が進むいま、薬剤師には今まで以上に「経営への理解と貢献」が求められています。そこで今回は、診療報酬・調剤報酬の正しい理解、調剤報酬改定の方向性やポイントの把握、今後の方向性についてお話します。

診療報酬とは


診療報酬とは、「保険医療機関及び保険薬局が診療行為や医療サービスに対する対価として保険者から受け取る報酬」のことをいいます。厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を踏まえ決定しているものです。
日本には全国民に加入が義務付けられている公的医療保険制度があり、ケガなどで病院を受診する際に保険証を提示すれば、誰でも必要な医療行為を受けることが出来ます。その対価として、医療機関に支払われるのが「診療報酬」です。

診療報酬の支払いについて

診療報酬は、医科、歯科、調剤報酬の3つに分類されます。原則として実施した医療行為ごとにそれぞれの項目に対応した点数が加えられ、1点の単価を10円として計算され支払われる、いわゆる出来高払い制になっています。例えば、「盲腸になって入院した場合」では、イメージとしては以下の項目が加算されます。

  • ・初診料
  • ・入院日数に応じた入院料
  • ・初診料
  • ・盲腸の手術代
  • ・検査料
  • ・薬剤料

保険医療機関は、加算されたこれらの合計額から、患者の一部負担分を差し引いた額を審査支払機関から受け取ることになります。

診療報酬改定とは

診療報酬の点数は、通常2年に一度見直しが行われることになっており、これを「診療報酬改定」と呼びます。
診療報酬改定の流れとしては、まず政府が国の予算編成をする際に診療報酬全体の「改定率」というものを決定し、それを基に、厚生労働大臣の諮問機関である「中央社会保険医療協議会(中医協)」に意見を求めます。国が改定率を決めそれを諮問機関である中医協が議論するという流れです。

診療報酬改定における中医協の役割

公益委員(学者など)、診療側委員(医師の代表など)、支払側委員(健康保険組合の代表など)の三者構成となっています。
中医協では、前回の改定に関しての議論や結果などについて話し合いを行い、その議論の上で厚生労働大臣からの諮問に対して、厚生労働省で決められた改定方針に従って各医療行為などの点数の見直し内容を決めます。
中医協に診療側の委員や支払い側の委員、公益委員の学者など、さまざまな立場の人たちが集まって意見を出しあい、その年の見直し内容を決めているということです。

2022年度診療報酬改定のポイント


2022年度の診療報酬の改定率は、薬科を除き前回の改定よりも比較的小幅プラスの改定となりました。
2022年度(令和4年)診療報酬の改定率
全体 +0.43%
調剤 +0.08%
薬価 ▲1.35%

参考:厚生労働省|令和4年度診療報酬改定について

2022年度調剤報酬改定の3つの要点

今回の改定でおさえておくべき要点は以下の3つです。

  1. ①薬局薬剤師業務の評価体系の見直し
  2. ②リフィル処方箋の導入
  3. ③地域体制加算に関する区分の変更

それぞれについて、以下で解説をしていきます。

①薬局薬剤師業務の評価体系の見直しについて

今回の調剤報酬改定では「対物業務及び対人業務を適切に評価する」という観点から、薬局薬剤師業務の評価体系が見直されました。薬局薬剤師の調剤業務は、以下のステップから構成されています。

  1. 1.患者情報等の分析・評価
  2. 2.処方内容の薬学的分析
  3. 3.調剤設計
  4. 4.薬剤の調製・取りそろえ
  5. 5.最終監査
  6. 6.患者への服薬指導・薬剤の交付
  7. 7.調剤録、薬歴の作成

今回の改定では、1.2.3については調剤管理料として、4.5については薬剤調製料として、6及びその後の継続的な指導等は服薬管理指導料で評価されることになりました。これまで少しあいまいという声もあがっていましたが、薬剤調整料は対物業務、調剤管理料・服薬管理指導料は対人業務としてすみ分けがよりはっきりされたという印象です。

②リフィル処方箋の導入

そもそも、リフィル処方箋とは「一定の期間内に反復使用できる処方箋のこと」を言い、アメリカやイギリス、フランスなどではすでに導入されています。

今回の改定により、症状が安定している患者については、医師の処方と医師及び薬剤師の適切な連携のもと、一定期間内に処方箋を最大3回まで反復利用できるリフィル処方箋が導入されることになりました。
リフィル処方箋の交付を受けた患者に対しては、継続的な薬学的管理指導のため、同一の薬局で調剤を受けるべきである旨を説明することが薬剤師の義務として明文化されました。

一方で、リフィル処方箋においては「調剤日及び次回調剤予定日を記載する」など、事務的な業務についても注意が必要になってきます。

③地域体制加算に関する区分の変更

地域支援体制加算については、これまでの2区分から以下の4区分に変更されました。

イ.地域支援体制加算1 :39点
ロ.地域支援体制加算2 :47点
ハ.地域支援体制加算3 :17点
ニ.地域支援体制加算4 :39点

地域医療における薬局や薬剤師の貢献という点をより細分化し、それぞれを評価する構造となりました。調剤基本料が1の薬局は1・2を目指すことができ、それ以外の調剤基本料を算定している薬局は、3・4を目指すことができるというイメージです。

診療報酬・調剤報酬の基本と報酬改定の総括


診療報酬・調剤報酬の基本と、2022年度(令和4年)のポイントについてお話をしてきました。
最後に、日々薬剤師と関わるキャリアコンサルタントの視点で、今回の調剤報酬改定の3つのポイントを踏まえ、薬剤師に必要なことについてまとめます。
転職市場の買い手化が進むいま、薬剤師に求められるのは「薬局経営への理解」です。そのためには調剤報酬への理解は欠かせません。

また、調剤報酬改定内容自体への理解も大事ですが、その他にも今回の改定では、

  • ・薬局薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進
  • ・薬局の機能と効率性に応じた評価の見直し
  • ・在宅業務の推進
  • ・ICTの活用

といった方針も示されており、これらの今後の方向性への理解も同時に行うことで、薬剤師として長く活躍でき、また買い手市場においても医療機関に求められる人材になれるのではないでしょうか。薬剤師ベストキャリアでは、薬剤師に必要な知識を配信するYouTubeチャンネル「キャリアのおくすり」で診療報酬・調剤報酬の基本についてわかりやすく解説しています。

国家資格キャリアコンサルタント
吉田 智治Tomoharu_Yoshida

異国情緒溢れる長崎県出身。大学卒業後、旅行業10年を経て、キャリアアドバイザーへ転職。「人と人との出会い、つながりを大切に」をモットーに、日々奮闘中。

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