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キャリアアドバイザーコラム

薬剤師不足の真相は?

10年以上前から「薬剤師不足が解消する」といわれていますが、
実際のところはどうなのでしょうか?

薬剤師の需給バランス

2017年12月に厚生労働省が「薬剤師の資格保有者が30万人を超えた」と発表しました。

また、新卒薬剤師の数が新卒薬剤師の需要数の約2倍と言われており
数字だけでみると薬剤師資格保有者は飽和状態にあると受け取れます。

さらに、厚生労働省による予測で2028年には薬剤師需要数よりも、
総薬剤師数が約15万人多い状況になるといわれています。

しかし、厚生労働省が別で発表している資料によると
医師・歯科医師・薬剤師の求人倍率は10倍を超えています。

ちなみに、看護師や介護士の求人倍率は3倍程度、
全職種をあわせた求人倍率は1.5~1.6倍と言われています。

求人倍率だけをみると薬剤師不足が顕著であり、
薬剤師がどの程度必要とされているかが鮮明にわかりますね。

このように数字上では薬剤師の数が多くなっているのにもかかわらず、
なぜ薬剤師の人手不足が叫ばれているのでしょうか?

「空白の2年間」

この背景には、平成18年に起こった「空白の2年間」が影響しているといわれています。
4年から6年へと薬剤師の育成に要する時間が変わったことが原因とされています。

これにより、薬剤師の養成学校は、2年間新卒薬剤師を輩出することができず
病院や調剤薬局、ドラッグストアへの入社数は激減しました。

また、6年制の学校を卒業した薬学生が国家試験を受けても合格率が予想よりも低く、
期待していた人数の獲得ができなくなっていることも要因とされています。

加えて、調剤薬局・ドラッグストアの新店舗開設が相次ぎ
薬剤師需要の数が薬剤師供給の数に追いつかず、多くの医療現場が薬剤師不足へと陥っています。

また、地域によって薬剤師の需要と供給のバランスが合っていないことも原因とされています。
薬剤師が都市部に集中し、都市部への人材が集中しているため、

深刻な地方での薬剤師不足

地方やへき地の薬局や病院では薬剤師不足になっています。

昨今のニュースや様々な情報から想像するに、おそらくこの薬剤師需要は
今後の社会状況により想定以上に増加することもあり得ると思います。

なぜなら、日本として少子高齢化社会が進展し、
医療やヘルスケアに対する社会的ニーズが高まり続けているという事実もあるからです。

診療報酬改定の方向としても、在宅医療への参画など幅広い領域を求められており、
これまでの調剤薬局やドラッグストア、病院といった職場だけではなく
薬剤師の活躍場として様々なバリエーションが考えられています。

そのため、これから必ずしも薬剤師過剰時代が訪れるというわけではないと予想されます。

ただ、薬剤師需給を全体的な傾向として考えるのであれば、
今後は薬剤師需要に対して薬剤師供給過剰が続いていくという傾向が
より強化される可能性はかなり高いと思います。

売り手市場から買い手市場へ

それに伴い、薬剤師の就職・転職事情はかつての売り手市場から

買い手市場へと徐々に変化していくことも考えられます。

正直、「薬剤師だからなんとかなるだろう」というスタンスで
現在お仕事されている方々には大変厳しい時代になることが予想されます。

今後は薬剤師自身が少子高齢化に伴う医療や介護を取り巻く
あらゆる問題解決に積極的に携わっていくことで、新たな需要を創出していく必要性があります。

つまり、薬剤師として長く活躍し続けるには、他の薬剤師とは違う専門性を持ち、
高いスキルと知識を身に就ける必要があり継続的な研鑽が求められるようになるのは間違いないでしょう。

転職活動を成功へ導くためにも、薬剤師の方々は、
市場動向に基づいた需給バランスに悲観視的になるのではなく、
積極的に業務の専門性追求や自身のスキルアップを目指していくことが、
今後も薬剤師として長く活躍していけるかどうかの分かれ目となると思われます。

国家資格キャリアコンサルタント
非公開: 宮森 香理Kaori_Miyamori

北海道出身。関西の大学へ進学後、新卒で入社。広島⇒神戸⇒札幌と様々な拠点にて勤務。現在は、北海道・東北エリアの薬剤師を中心に転職支援を行う。

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