先日、アマゾン・ドット・コムが日本で処方薬販売への参入を検討していることが分かりました。
中小薬局と組み、患者がオンラインで服薬指導を受ける新たなプラットフォームをつくる方向で、利用者は薬局に立ち寄らずに薬の配送までネットで完結できるようになります。
国内で電子処方箋の運用が始まる2023年に本格的なサービス開始をめざしているとのことでした。
各報道では、「アマゾン薬局」との記載がされていますが、当面はアマゾンが薬局を運営して直接販売するわけではなく、在庫なども持たないようです。
患者はオンライン診療や医療機関での対面診療を受けた後、電子処方箋を発行してもらい、アマゾンのサイト上でアマゾンと組む薬局に申し込みます。
薬局側は電子処方箋をもとに薬を調剤、オンラインで服薬指導を行い、その上で配送はアマゾンが契約する宅配事業者を活用するなどして、薬局から患者の自宅や宅配ロッカーなどに届ける仕組みを検討中とのこと。
通常、アマゾンは注文を受けた商品を、全国20カ所以上ある自社の物流センターから発送し当日や翌日などのスピード配送を実現していますが、今回は別のしくみになるとみられています。
ただ、プライム会員には配達料を無料にするなど、ユーザーにメリットを提供できれば、さらに消費者を囲い込める可能性もあります。
アマゾンの本拠地アメリカにはすでに「アマゾン薬局」が存在しています。
アマゾンはアメリカ国内で2020年11月にオンライン薬局「Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)」を立ち上げ、処方薬販売に本格参入済み。
ウェブサイトやアプリで処方薬を購入でき、有料のプライム会員であれば処方薬を注文から2~3日程度で無料で配送してもらえるとのこと。
また、医療保険に加入していない方向けのジェネリック医薬品などの割引サービスや、CVSなど大手ドラッグストアを含む全国5万の薬局と組んだ店頭での割引などもあるようです。
日本国内の大手薬局チェーンも以下の通り、それぞれオンライン薬局に取り組み始めていますが、Amazonが本格参入するとなると「大きな脅威になる」との声も出ています。
・クオールHD: マイシンやメドレーのオンライン服薬指導サービスを採用
・アインホールディングス(HD): ビデオ通話で服薬指導をできる専用アプリの開発
・イオン薬局: 2024年度をめどに処方薬の即日配送サービスを一部地域で事業化の予定
また、日本保険薬局協会(NPhA)の首藤正一会長(アインホールディングス)は9月8日の記者会見で、アマゾンの国内の日本で処方薬販売への参入の報道について、「アマゾンが実際に薬局に話を持ちかけてきたこともあり、十分予想されたこと」「我々業界にとっては驚くようなことではない」と述べました。
また、「アマゾンがやろうとしていることに関して、我々にできないことは基本的にはないと思っている」と牽制。
「かかりつけ薬剤師機能を含めて、機能をどれだけ高めていけるかにかかっている」とリアル店舗での強みに自信を見せ、「仮にアマゾンが法的なものをクリアし、安全性も担保したなかでこういう事業をやってくるということであれば、利用する患者側にとっては選択肢が増えることであり、悪いことではないと認識している」とも話しました。
一方で、日本薬剤師会の山本信夫会長は9月8日の定例会見の中で、「われわれの世界からすると、国がどちらに引っ張ろうとしているかも大きな問題。これだけ規制を受けた業種だから、国の方針に極めて大きな影響を受ける。国にも考えてもらわないと、われわれだけでは考えきらないところがあるだろう」と述べました。
今回のアマゾンの国内処方薬販売への参入のニュースについて、今後の見通しを考える上でのポイントは以下のとおりです。
・調剤薬局はコンビニを上回る6万店を超え、飽和感状態
・外出せずに処方薬を受け取る人の増加
このあたりを踏まえると、「門前」に薬局を構える伝統的なビジネスモデルが崩れる可能性もあるかもしれません。
薬剤師のキャリア・転職支援を20年以上にわたり手掛ける弊社のキャリアアドバイザーの視点で今回のニュースをまとめてみます。
まさに「黒船襲来」といった印象です。
これが浸透していけば、門前薬局が減っていく一方で、「Amazonのシステムに寄せていくスタイルの薬局」が出現する可能性もあり、薬局・薬剤師のビジネスモデルや業務内容・働き方が大きく変わっていく可能性も考えられます。
キャリアや転職をお考えの薬剤師の皆さにまには、ご自身が所属する会社で、「どのような取り組みをしているのか」「どういった戦い方をしていくのか」を確認された上で、ご自身の思う今後のキャリアと照らし合わせてみるよい機会になるのではないでしょうか。
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異国情緒溢れる長崎県出身。大学卒業後、旅行業10年を経て、キャリアアドバイザーへ転職。「人と人との出会い、つながりを大切に」をモットーに、日々奮闘中。