新型コロナウイルスが大変な状況ですが、
公的年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げられるようにする年金改革法案が
4月14日に衆議院本会議で審議入りしました。
政府は働く高齢者の増加を踏まえ、年金の受給開始年齢を選べる上限を75歳に延ばし、
75歳から年金受給とすれば年金月額を1.84倍にするという内容とのこと。
※ちなみに、なぜ1.84倍になのか?
年金を繰り下げると、繰り下げた月数分、0.7%ずつ年金額が増えるため、
仮に75歳まで120ヶ月繰り下げると、65歳開始の人に比べて
毎月の年金額が84%増える仕組みです。
現在、年金受給開始年齢は原則65歳ですが、実際には「60~70歳」まで好きな年齢から受給することが選べます。
もし、65歳より早く年金をもらう「繰り上げ」を選べば長く受給できるかわりに年金額が減らされ、
逆に、65歳より遅くもらい始める「繰り下げ」は受給期間が短いかわりに年金額は割増しされるシステムです。
この受給開始年齢の上限を75歳まで引き上げようというのが大きな変更点となります。
国としては、高齢者の就労を促しているため、65歳以降も働き続け、
年金に頼らずに生活できる人は、年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げることにより、
その後の年金額を増やすことができるようになります。
そのためにも、厚生年金の加入要件の1つとして企業の従業員数の基準「501人以上」となっている要件を緩和し、
段階的に下げて「51人以上」とし、パート労働者などが厚生年金に加入できるようにするとのこと。
この厚生年金の加入要件を緩和することで、新たに65万人が加入する見通しとなっています。
より多くの短時間労働者が厚生年金の被保険者となることで、勤め先の健康保険に加入することになり
その結果、病気などで休業した場合の傷病手当金などの保障が充実するとともに、
老後の年金額を増やすことができるようになる仕組みのようです。
また、在職老齢年金の引き上げも検討されています。
この在職老齢年金とは、一定以上の収入がある高齢者の年金の一部を減らす制度です。
現在は60~64歳で賃金と年金の合計額が「月28万円」を超えると、
年金が減ってしまう制度ですが、今回の法改正でこの基準を「月47万円超」までに引き上げる予定です。
2022年4月から適用される見通しですが、月47万円を超えると、年金の一部または全額支給停止となります。
首相は「働き方の変化を中心に据えて改革し、年金制度の安定性を高める」と話し、
政府は一連の制度改正により高齢者の就労を促していますが、現実はかなり厳しいのではないかと感じています。
現状、働きたいと考える高齢者がいても、その高齢者の働く場所の確保ができていないからです。
需要と供給のバランスが悪い中、
さらに高齢者が増える見込みである日本に果たしてこの年金制度改革は適切なものなのでしょうか。
また、日本人男性の2018年の平均寿命は81.25歳、日本人女性の2018年の平均寿命は87.32歳、
自立して生活できる年齢を指す「健康寿命」は2016年で
日本人男性は72.14歳、日本人女性は74.79歳と言われています。
日本人男性の平均寿命を考えると、年金受給75歳開始となった場合、
総支給額では損をしてしまう・・・といった可能性もあるのではないでしょうか。
年金受給開始の年齢については、雇用の有無、ご自身の健康寿命、
ご自身の年金額がどうなるかを把握した上で冷静に判断することが今まで以上に必要ではないかと思います。
※参考コラム
【「高年齢雇用継続給付」がなくなる?!】
【2020年から変わるルールって・・・?】
【人口減少がとまらない日本~2018年の出生数、過去最少を記録~】